あしき。ただのあしきだ。

大学2年生の暇つぶしです。フリージャンルです。面白い事は言えない。挿絵が漫画形式の漫画小説書いてます。【陽月のプルーフ】連載中です。

【陽月のプルーフ】1話:先生

f:id:mkmkkaito:20181218003828j:plain

 

万物には必ず役割がある。

太陽が我々を鼓舞し

月明かりが我々に安らぎを与えてくれるように。

それは、人も同様。

 

人として生を享けたならば

人として果たすべき役割がある。

人はそれを見つけねばならない。

しかし、役割は多様。

決して容易でない事を心に留めよ。

 

これは先生の言葉。

よく聞かされたお馴染みのフレーズだ。

特別好きだという訳でもないが

どこか意義深さを感じる。

 

 

海の良く見える、この高台に来ると

いつも、そのフレーズが頭を過っていた。

まるで海がオレに教示するかのように。

 

だから、いつもこう呟く。

 

「教えてよ、オレの役割。」

 

ザザザァーザザザァー

 

海は相変わらず波を起こすばかりで

オレの声はすぐにかき消されてしまう。

 

f:id:mkmkkaito:20181216204624j:plain

 

 「先生・・・。いつ帰ってきますか。

もう・・・・あれから、3年経ちましたよ。

手紙くらい、よこしてくれても・・・。」

 

先生は度々出張に出かける。

基本的に3ヵ月で戻ってきては、しばらく休み

再び3ヵ月の間、出張に出かける

というのを繰り返していた。

先生が出かける度に行先を聞くのだが

絶対に教えようとはせず、

その度に先生は

 

「お土産を買ってくるからな」

などと言って誤魔化していた。

 

そして、今回の出張。

今回と言っても3年前になるが、

今までとはどこか異質な空気を感じた。

 

いつも通り行き先は教えてくれなかったし

お土産の話すらもしてくれなかった。

 

でも、去り際にはいつもの一言。

 

「果たすべき役割がある。」

 

いつも先生が使うその言葉。

聞きなれた言葉だけに、

その日のものはまるで違って聞こえたんだ。

 

 

ザザザァーザザザァー

 

髪の毛の一本すらなびかぬ程の無風だからか、

波音だけがオレの耳に届く。

・・・だから、という訳ではないが、

君しか話を聞く人がいないように思えたので

オレはウミに話しかけた。

 

「ねぇ、ウミは先生がどこにいるか知っているの。」

 

ザザザァーザザザァー

 

ウミは呑気に自分の成すべきことをしている。

 

・・・・帰るか。

 

 

青く澄んだ空は次第に朱く燃えあがり

太陽は海の向こう側へと沈んでゆく。

何とも美しい夕焼けとは裏腹に

オレの心は憂いを帯びていった。

 

暗がりに微かな黄が混じり始め

月明かりが戸の隙間から差し込む。

今日は満月らしい。

部屋に差し込む月光の力強さを見てそう思った。

 

そうこうしているうちに

ゆっくりと、まぶたが落ち始め、

優しい月の明りに見守られながら

すぅっと、眠りについた。

 

f:id:mkmkkaito:20181216233843j:plain

 

翌朝。

 

 

夢を見ていた。

内容は覚えていない。いつもそうだ。

覚えている夢ほど、意味がなかったりする。

まぁ、そんな事はどうだっていい。

 

今日は大事な用事があるんだ。

早く準備しなきゃ・・・・

 

そう思って起き上がろうとした矢先に

部屋の戸が勢い良く開かれた

 

バンッ

 

f:id:mkmkkaito:20181217000408j:plain

 

彼女の名はミオナ。

ここ妙顕寺(みょうけんじ)で

共に暮らす仲間・・・?の一人だ。

 

妙顕寺は先生が建てたお寺で、

先生が出張で不在のときは

オレたちがお寺の手入れをしたりして

このお寺を守っている。

 

このお寺がなくなればオレには住む場所がない。

それは、ミオナも同様らしい。

 

オレとミオナは先生に拾われてここに来た。

詳しい事は知らないし、聞かないようにしてきた。

だから、あっちもオレの事について

詳しく知ろうなんて思っていない気がする。

ていうか、ちょっと嫌われてるかもしれない。

・・・・。

 

あ、準備しないと!

ミオナがまた怒るぞ・・・。 

 

 

オレは直ぐ様、服を着替え

部屋を飛び出した。

 

 

夏は暑く、冬はオレの背丈程雪が積もる。

四方八方、どこを見渡しても山しかない。

そんな、ところに

オレらの居場所「妙顕寺」はあった。

 

日は1年に1度の大事な日

この寺院に超お偉い様がお越しになる。

そのため、早朝に掃除をすると決めていたはずなのだが・・・

 

オレはうっかり寝坊していたみたいだ。

 

 

 

 

f:id:mkmkkaito:20181217011804j:plain

もう一人紹介しなければならない。

彼の名前はヤマト。

ヤマトもまた、ここ、妙顕寺に通う者の一人。

 

どういう原理か知らないが、いつも髪が逆立っている。

いわゆるアホだ。

寝坊したオレを責めているが

彼は今日がどういう日かを分かっていない。

オレ的にはそっちのほうが問題あると思うのだが・・・。

 

そう、今日は、ここ妙顕寺にとって大事な日だ。

 

寺院にはその地域の治安を維持する役割があった。

それ故に、国から多少のお金が支給されていた。

先生が不在でもオレたちが普通に暮らせていたのはそれが所以である。

 

しかし、治安維持を名目に不正を働かせた寺院が多くあった。

そのため、3年に1度、寺院を視察するという

寺院監察制度が設けられ

監察役には国の神社、寺院を管理する寺社庁と

義恩大寺(ぎおんだいじ)の義恩大僧正が任命された。

 

 

f:id:mkmkkaito:20181225122910j:plain

 

義恩大僧正は辺りを一瞥し、首を傾げた。

「ありゃ・・・?妙顕は不在かのぅ?」

その言葉にオレらは思わず、顔が曇る。

一瞬、沈黙の時間が流れたが、すぐにミオナが答える。

 

「先生は・・・出張に出かけています」

 

他に言いようがないだろう。

いつも冷静なミオナでさえ、

先生が3年も帰ってこないという現状に

動揺を隠しきれていないようだった。

 

そもそも、3年に1度の寺院監察の日に

寺院の代表である者が不在、

ということこそが異常な事態であり、

ミオナが言葉に詰まったのも無理はない。

 

「出張・・・じゃ?」

 

義恩大僧正が発した

静かに、くぐもった声にオレとミオナは萎縮した。

 

実際に監察が来るまで気付けなかった。

監察にオレらのような子供が相手をするなんて

バカでもはっきり分かる程失礼な事だ。

わざわざこの秘境まで足を運んでくれたのに・・・。

 

そう思うと自然と視線が下がってゆく。

 

 

「ガハハハハ!!!」

 

オレたちの予想に反するように

義恩大僧正は暢気な笑い声をあげていた。

 

「妙顕の弟子たちも苦労人じゃろうて。

ったく、こんな日にも弟子たちに寺院を任せおってぇ

 

どうやら、あまり怒ってはいないらしい。

義恩大僧正の器が大きいようで、助かった。

 

「行き先は聞いておるか?」

 

行き先・・・。

それはオレたちの方が聞きたいくらいだ。

だから、ありのままを伝えることにした。

 

「先生が出張に行く際はいつも決まって、

行き先だけは教えてくれないのです。

ですから、今回の出張も・・・。

すみませんが・・・分かりません。」

 

「ほぅ・・・。それは困ったのぅ。」

 

 白く長い顎髭を撫でながら、頭を悩ませている。

すると、義恩大僧正の後ろから

寺社庁の役人が身を乗り出すように現れ、

怪訝そうな面持でオレたちに尋ねた。

 

「いつからだ?いつ、ここを出たんだ?」

 

どこか落ち着かない様子の彼を見て

何かを悟ったミオナの目は

この上もなく真っ直ぐだった。

 

「3年です。3年前、出張に行き

それ以降一度も帰ってきてません!

手紙もありません。何一つ。」

ミオナはその先にある答えを欲しがっているかのように

異常なほど早口に言い募る。

 

「3年・・・か。」

 

この場にいる者全員に、その3年という

言葉の重みがのしかかり、不穏な空気に包まれる。

 

「妙顕・・・。お前・・・。」 

 

 僅かに聞き取れる程の小さな呟きだった。

そして、彼はこう続けた。

 

 

 

 

 

「これが・・・私の役割なのか・・・?

 

 ・・・・・妙顕よ。」

 

 

 次回  2話『役割』

 

 

プロローグはこちらから

www.morinari-ashiki.com